こんにちは、自由にいきたいライター凛(りん)です。
今回は文豪ストレイドッグス小説2巻である『太宰治と黒の時代』の内容まとめ(ネタバレ)と感想になります。
登場人物
太宰治・・・ポートマフィア歴代最年少幹部、自殺愛好家
織田作之助(織田作)・・・ポートマフィア最下級構成員、何でも屋的存在
坂口安吾・・・ポートマフィア専属情報員
森鴎外・・・ポートマフィア首領
芥川龍之介・・・ポートマフィア、太宰治の部下
種田長官・・・内務省異能特務課最高指揮官
アンドレ・ジイド・・・ミミックの長
【序章】
夜遅く、織田作が「誰かに呼ばれたような気がした」と酒場のバールパンに足を運ぶと、太宰が先に酒場にいた。
織田作が現れると「やァ、織田作」と嬉しそうに太宰が言った。
そして何気ない会話を交わす二人。
太宰の新しく考えた自殺方法について、今日の任務で死にそびれたことについて、崖や排水溝に落ちてケガをして、また包帯が増えたことについて・・・
そんな話をしていると、安吾が酒場に現れた。
「織田作さんは太宰君に甘いんです。太宰君の台詞(セリフ)の三つに二つくらいは金槌で後頭部を叩いて突っ込むくらいでないと、収拾がつかなくなりますよ」と言いながら。
そんな安吾に太宰が「やぁ安吾!暫く見なかったけど、元気そうじゃあないか」と笑顔で手を掲げる。
安吾は東京出張から帰ってきたばかりでくたくただと言い、いつものお酒をマスターに注文する。
酒場にいつもの三人が揃った。
ポートマフィアの最年少幹部と最下級構成員と情報員という、本来であれば一緒にお酒を飲むどころか、顔を合わせることも、互いの名前を知ることもない三人。
なのに三人は不思議と、このいつもの酒場に集まり言葉を交わす。
この日もいつものように言葉を交わして、他愛もない話をしていると、唐突に太宰が言った。
「そうだ、写真を撮ろうよ」
何枚か写真を撮って、織田作が不意に太宰に尋ねる。
「太宰、何故急に写真なんだ?」
その質問に太宰はにこりと笑いながら答えた。
「今撮っておかないと、我々がこうやって集まったという事実を残すものが何もなくなるような気がしたんだよ。何となくね」
【1章】
翌朝、急に織田作のもとへ首領森鴎外からの呼び出しがかかる。
首領から最下級構成員に呼び出しがかかるなんて何事かと思いながら、車を飛ばして首領のもとへ急いで向かう織田作。
そこで安吾が行方不明になったということを聞かされる。
そして安吾の行方を捜してもらいたいという任務を言い渡される。
安吾は自ら消息を絶ったのか、それとも誰かに連れ去られたのか・・・
安吾の自宅に調査へ向かうと、部屋の屋根裏から、小さな白い金庫に入った灰色の旧式拳銃を見つける。
その灰色の旧式拳銃は、太宰が調査し、追っている欧州の犯罪組織ミミックのエンブレム。
そのミミックのエンブレムが安吾の部屋から見つかったということはどういうことなのか・・・
太宰と織田作は「何故?」と考える。
そして織田作は太宰から、昨日の夜、酒場で安吾が二人にウソをついていたということを伝える。
本当は東京に出張など行っていなかった。
傘の濡れ具合から、雨の中誰かと密会をしていた、そしてそれを二人には秘密にしていた。
それは何故なのか、どうして秘密にする必要があったのか・・・
【2章】
織田作は馴染みの洋食屋に来ていた。
いつも注文するカレーを食べる。
そして洋食屋の二階にいる五人の子供たちの様子を見に行き、戯れて会話する。
この子供たちは龍頭抗争で親を亡くした孤児たちであり、今は織田作が養っている。
一階の洋食屋に戻るとカレーを食べる太宰がいた。
太宰からミミックについて新たに分かった情報を聞く。
ミミックは欧州の異能犯罪組織。
彼らは元軍人であり、組織の党首も軍人であり、かつ強力な異能者であるということ。
そして太宰は言った。
「対ミミックの戦略立案と前線指揮を仰せつかったよ。早速いくつか罠を仕掛けておいた。簡単なネズミ罠さ。近いうちに戦局が動くんじゃあないかな」
さらに太宰は言う。先日ミミックから襲撃を受けたポートマフィア武器倉庫の暗証番号情報が「安吾によってもたらされたものだと、ほぼ確定した」
そして太宰の携帯電話が鳴る。
「ネズミが罠に掛かった」
太宰がポートマフィアの地下階段を下りて特別収監房へ行くと、罠に掛かったミミック兵士たちの死体があった。
拷問する為に連れてきたミミック兵士たちが死んでいる。
「説明が欲しいな」と太宰が言うと、背広を着た部下の一人がミミック兵士を収監房へ連れてくるまでの説明と、連れてきてからの説明を始める。
予定よりも早く目を覚ましてしまったミミック兵士が、情報を喋らせない為に仲間を射殺したあと、ポートマフィアたちに襲い掛かってきたという。
そして襲ってきたミミック兵士を芥川が殺した。
「何か問題でも?」と芥川が太宰に言う。
「不撓不屈の恐るべき敵兵士を倒し、仲間を守った訳だね芥川君。全くもって素晴らしい」
「君の異能力でなければ、そのような強敵を一撃のもとに倒すなど出来なかったろう。流石は私の部下だ。お陰で捕らえた敵兵士は三名とも死亡だ。罠を張ってまで苦労して生け捕りにした兵士をね。これで手懸かりは無くなった。一人でも生き残っていれば、敵の本拠地、敵の目的、次の標的、指揮官の名前と素性、そして指揮官の異能力。貴重な情報が聞き出せただろうに。全く善くやったよ。
「情報など―――連中如き僕(やつがれ)が纏めて四つ裂きに」
芥川が話し終わる前に太宰が芥川の顔面を殴りつけ、芥川は吹き飛んだ。
そして銃口を芥川へ向けて三発撃った。
銃弾は芥川のぎりぎり手前で止まっていた。
異能で止めることが出来たのを見て楽しそうに太宰が言った。
「へぇ、やれば出来るじゃあないか」
「何度も教えたろう。哀れな捕虜を切り裂くだけが君の力の凡てじゃあない。そうやって防御につかうことも出来る筈だって」
そして氷より冷たい声で太宰が芥川に言う。
「次しくじったら、二回殴って五発撃つ。いいな」
織田作は安吾と初めて会った時のことを思い出す。
旧式の拳銃、倉庫の暗証番号・・・三人の関係は急速に壊れつつあった。
すると太宰から織田作の携帯電話に連絡が入る。
ミミックが根城にしていた施設が分かっと言われ、そこへ向かい建物に入ると椅子に縄で縛りつけられた安吾がいた。
安吾に駆け寄る織田作。
そして織田作の推理したことを安吾に伝える。
安吾はミミックのスパイでなく、ミミックに潜入していたポートマフィアのスパイであり、スパイであることがミミックにばれてしまったのだということを。
それに安吾は驚きながらも、事実と認め、ミミックが建物ごと裏切り者の安吾を吹き飛ばそうとしていることを伝える。
そして爆発するなか、なんとかギリギリで建物から脱出した二人。
外に出ると、不自然にマリが足元に落ちていた。
それを拾う織田作。
するとマリに塗られていた毒のせいで、織田作は倒れ意識を手放してしまう。
意識を手放す前、安吾が黒い特殊部隊とともに森に消えていく姿を見た。
【3章】
美術館で芥川の部隊がミミックから奇襲を受けていた。
芥川はミミック兵士を次々に異能力羅生門で切り裂いて倒していく。
するとミミックの長、アンドレ・ジイドが現れ芥川に自分と戦ってほしいと願う。
芥川は今までの強さが嘘のようにジイドには全く歯が立たない。
腹、腕に銃弾を受け、羅生門による攻撃もすべて避けられ、防がれてしまい、追い込まれる。
負けを認めて、撃ち殺されることを受け入れた芥川だったが、そこに織田作が現れ芥川を助ける。
そしてジイドは織田作に、自分と戦って、自分を殺してほしいと願い出る。
ジイドは織田作と同じ、未来を予知する異能力者だった。
自分を殺せるのは織田作しかいないとジイドは言うが、織田作はジイドの願いを断る。
織田作は人を殺さないマフィア。
それの理由は小説家になりたいから。
「銃を捨てて、紙とペンだけを持って・・・ある人が俺に『小説を書くことは、人間を書くことだ』と云った。・・・人の命を奪うものに、人の人生を書く事は出来ない。だから俺はもう、二度と人を殺さない」
それをきいたジイドは織田作に言う。
「理解させてやる」
「何があるかを見せてやる。そうすれば判るだろう、本当のことが。貴君と乃公(おれ)のどちらかが死ぬしかないと云うことが」
そして立ち去っていくジイド。
その夜いつのも酒場に太宰に連れられて向かった織田作。
すると店の中には安吾がいた。
そこで安吾が異能特務課のエージェントであり、スパイとしてポートマフィアに潜入していて、さらにスパイとしてミミックに潜入していたという、三重スパイだったことを知る織田作。
【4章】
織田作は玩具やお菓子の入った紙袋を両手で抱えて、養っている子供たちが一時的に避難している会議室へ向かう。
しかしその会議室は荒らされ、そこに子供たちはいなかった。
子供たちはミミック兵士に捕まり、バスに押し込まれ、そのままバスは走り去っていく。
織田作はバスを追いかける。
先回りし、追いついたところでバスを運転していたミミック兵士が信号発信機を手に持っているのを目で見る。
その信号発信機が押されると、バスは大爆発、吹き飛び炎上した。
馴染みの洋食屋に行くと店主も殺されていた。
そこには一緒にミミック兵士が残していった地図が置いてあった。
織田作は二階の子供部屋に行き、子供たち一人一人の名前を呼び、「おやすみ」と言う。
そして「仇を取ってくる」と言って外に出る。
そのころ、横浜の洋上の小ぶりの観光船の上では、秘密の会合が行われていた。
ポートマフィア首領森鴎外と内務省異能特務課の最高指揮官である種田長官が向かい合って座っている。
仲介役として安吾が間に立っている。
異能特務課からポートマフィアへの要求は二点。
安吾に一切危害を加えないこと、そしてミミックを壊滅させること。
そしてポートマフィアから異能特務課への要求はたったひとつ。
ポートマフィアが異能開業許可証を手に入れること。
地図で示されたミミック本拠地へたどり着いた織田作。
次々にミミック兵士を撃ち殺し、どんどん進んでいく。
そしてジイドのもとへたどり着いた。
ジイドは織田作に向かって言う。
「ご足労感謝するよ。子供達には申し訳ないことをした。だがその価値はあったようだな」
「貴君の目は乃公と同じだ。乃公や部下と同じ、生存の階段から降りた目だ」
「ようこそ、サクノスケ。乃公たちの世界へ」
そしてジイドと織田作はお互いの異能力の特異点の中で、自身のことを互いに語り合いながら戦い、最後の時が来る。
二人の胸に同時に銃弾が貫通し、互いが同じ姿勢で仰向けに倒れた。
そこへ太宰が到着するし、「織田作!」と駆け寄る。
織田作の受けた銃弾は明らかに致命傷だった、血だまりがひろがる。
織田作は太宰の手を握って言う。
「太宰・・・云っておきたい事がある」
「お前は云ったな。”暴力と流血の世界にいれば、生きる理由が見つかるかもしれない”と・・・」
「見つからないよ」
「自分で判っている筈だ。人を殺す側になろうと、人を救う側になろうと、お前の頭脳の予測を超えるものは現れない。お前の孤独を埋めるものはこの世のどこにもない。お前は永遠に闇の中をさまよう」
この言葉に太宰は、織田作が太宰の心の中心に近いところまで理解してくれていることに初めて気づく。
そして生まれて初めて心の底から知りたいことができ、織田作に質問する。
「織田作・・・私は、どうすればいい?」
織田作は「人を救う側になれ」と答えた。
「どちらも同じなら佳い人間になれ。弱者を救い、孤児を守れ。正義も悪も、どちらもお前には大差ないだろうが・・・そのほうが、幾分かは素敵だ」
「何故判る?」
「判るさ、誰よりもよく判る」
「・・・判った。そうしよう」
織田作は震える指で煙草を取り出し、マッチで火をつけると一度吸い込み、満足そうに微笑んだ。
煙草が床に落ちた。
【終章】
いつもの酒場で、いつもの三人で撮った写真を眺める安吾。
ミミックの残った逃走兵士を追い詰め切り裂く芥川。
黒い喪服に身を包み、白い花束を抱え、墓参りをする太宰。
太宰が消息を絶ったあとのポートマフィア。
横浜の安い居酒屋で、一人酒を飲む男、異能特務課種田長官の前にふらりと現れた太宰。
そして「転職先を探していましてね。どこかお勧めはありませんかね?」と言う。
「人助けが出来るところ」
それを聞いた種田長官は言う。
「君の経歴は汚れすぎとる。洗うためには二年ほど地下に潜る必要があるぞ。だがまぁ・・・先ずはご質問に答えようか。心当たりがないでもない」
「伺いましょう」
「異能力者を集めた武装組織だ。軍警や市警に頼れぬ、灰色の厄介事を引き受け解決する。そこの社長は心ある男でな。君の希望に沿うかもしれん」
「その組織の名は?」
「名か?その会社の名はな・・・」
――終――
【感想】
アニメ2期で見てはいたのですが、小説を読むと、また一味違いました!
そしてアニメとはセリフが違っていたり、演出が違っていたりして、「おー、小説ではこうなのか」と思いながら、アニメを思い出しながら読んでいました。
小説の良いところは、登場する人物たちの感情、考えていること、感じていることが、より感じられるところではないかと思います。
そして思うのが、織田作に死んでほしくなかった。
織田作が死ななかったら、太宰さんは今もポートマフィアにいたのかもしれないけど。
そして安吾が特務課エージェントじゃなくて、純粋にポートマフィアだったら・・・
三人はいつまでも友人として一緒に、いつも酒場で語り合って、一緒の時間を過ごせたのにな。
唯一の心を許せる場所であり、太宰さんの心に寄り添える、そんな場所と時間。
そして芥川ですが、太宰さんに「百年たっても織田作には勝てないよ」と言われ、ひどく悔しかったでしょうね。
「勝てない相手」でもあり、自分を認めてくれない太宰さんが「織田作は強い」とその強さを認めて、更には「友人」という関係にもある織田作。
芥川には手が届かない、悔しい気持ちもあり、でも羨ましい気持ちもあり・・・という存在だったと思います。
そして太宰さん、芥川本人の前では決して褒めないし、その力を認めていなかったけど、織田作の前では芥川を褒めてました。
太宰さんから、芥川が一言でも「自分を認めてくれる言葉」をもらえていたら、芥川はどうなっていたのかな、考えてしまいます。
今の芥川とは、性格とか、考え方とか、やっぱりちょっと違う風に成長していたのかな、とか。
「アニメと同じ感じかなぁ」と思って読み始めましたが、小説を読んで良かった。
より深い部分で登場人物たちを感じることができました。
そして文ストの世界観に浸れました。
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